初めまして。この記事を読んでくれた方ありがとうございます。
私は、元々整備士をやっていましたが、とある事情で大怪我をし、整備士を続けられなくなりました。現在は、整備士の方々に研修をするインストラクター(研修講師)のような仕事をやっています。
本来であれば、自分自身が工具を握り現場でバリバリ整備をやって、お客さんに喜んでいただきたいのですが、怪我の後遺症のためそれが難しく今のような仕事をしています。少しでも現場のみなさんの助けになればと現在の業務に励んでいます。
現在、自動車業界は大変革期であり、整備士の方々は常に新しい技術に対する情報を取得する必要があります。
そういった技術情報を現在の職場で、現場の方々に発信していきたいと思っているのですが・・・、なかなか会社というしがらみの中では限られた情報の提供しか行えない現状があり、このブログの開設にいたりました。
まだまだ不慣れな部分もありますが少しづつ改善できればと思っています。
では、前置きが長くなりましたが、今回のテーマに入っていきたいと思いますが・・・。
今回は、2024年3月に発売されたアコードハイブリッド(CY2型)についてお話していきたいと思います。
このCY2型のアコードは、11代目にあたりますが、国内初「ホンダセンシング360」を搭載しています。「ホンダセンシング360」については、実は、2022年に中国で販売されたCR-Vから搭載されているのですが、日本国内では初めての搭載となります。
このシステムは、ADASレベル3で話題となったホンダレジェンドで培った技術(ホンダセンシングエリート)を元に開発されています。(ホンダセンシング360についてはADASレベル2の機能)
「ホンダセンシング360」については、元々ホンダが採用していた「ホンダセンシング」の機能に、「前方交差車両警報」、「車線変更時衝突抑制機能」、「車線変更支援機能」の機能を追加し、機能を拡大した「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」と「渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)」を搭載しています。
それらの高いADAS機能を可能にしたのは、左右フロントコーナレーダ(ミリ波レーダ)と左右リヤコーナレーダ(ミリ波レーダ)の搭載です。
今までのホンダセンシングでは、マルチパーパスカメラ(単眼カメラ)+フロント中央レーダ(ミリ波レーダ)+パーキングセンサ(超音波センサ)の搭載でしたが、「ホンダセンシング360」については、前後バンパ裏にコーナレーダを搭載しています。
この新たに搭載されたADASセンサにより、先ほど紹介した高度な運転支援が可能なのですが、車体修復時には注意点がいくつかあります。
まず第一にバンパ損傷時の補修可否判断、使用する塗料、塗装方法などに注意する必要があります。
〇補修可否判断について
コーナレーダセンサ(ミリ波)の電波照射範囲内に、割れ、へこみ、素地の傷がある場合補修不可です。
※電波照射範囲外であれば、上記損傷があっても補修可ではありますが、ボカシ、クリヤのみを含め、照射範囲に塗装がかかる場合は、照射範囲内の旧塗膜をすべて除去し再塗装する必要があります。
※損傷が塗膜傷である場合、電波照射範囲、電波照射範囲外ともに補修可ではありますが、電波照射範囲である場合、電波照射範囲の旧塗膜はすべて除去し再塗装する必要があります。また、パテの使用は禁止されています。
電波照射範囲外である場合は、ボカシ、クリヤのみを含め、照射範囲に塗装がかかる場合は、照射範囲内の旧塗膜をすべて除去し再塗装する必要があります。
〇使用する塗料について
電波照射範囲内での塗装については、バンパ塗装前に下記の各電波透過性検証済み塗料メーカが発行するバンパ修理マニュアルおよび塗料配合情報を確認の上で修理を行う必要があります。
・アクサルタコーティングシステムズ
・イサム塗料
・BASFジャパン
・PPGジャパン
量産車の焼付塗装と同等品質を維持するために、アクリル ウレタン樹脂系1液、2液型塗料もしくは水性塗料を使用します。
アクリル ラッカ樹脂系塗料での補修は行ってはいけません。
〇塗装方法
実際のバンパー(もしくは同形状のもの)を養生し、上からTP(テストピース)を貼り付けて塗装を行い、膜厚を測定します。自身の塗装方法での膜厚を把握し、実塗装時の参考とします。ベースコート塗膜の膜厚はミリ波レーダーの透過に大きな影響を与えるため、各塗膜を指定膜厚以内で塗装する必要があります。そのため、必ず事前に塗装確認を行い、膜厚を計測し管理を行います。
・TP(テストピース)を2枚用意します。(1回ごとの単膜厚を確認するTP(テストピース)とTOTAL膜厚を確認するTP(テストピース))
※事前に塗装を行い、TP(テストピース)の膜厚、塗装回数、塗装条件を把握(記録)します。
※ガン距離、スピード、エアー圧、吐出量なども記録しておきます。
※同時に比色用のTP(テストピース)を作成しておくと便利です。
・膜厚の確認
膜厚管理用TP(単膜・TOTAL)の膜厚を計測して、ミリ波透過に問題のない膜厚になっているか計測を行います。
※簡易型の膜厚計ではなく、必ず電磁膜厚計を使用します。
これらの注意点の他にも新たに追加されたADASセンサの作業や、それに伴う注意点などもありますが、そちらについては次の記事にて紹介したいと思います。
これからも皆様に役立つ記事を発信していきたいのでどうぞよろしくお願いいたします。